2011年7月27日水曜日

七宝 其ノ五

涼しかったあの日々はどこへやら、アイスが美味しくてしょうがありません。

また間が開いてしまって申し訳ないです。やっとすべてのサンプル作品が揃いましたので、報告させて頂きます!


まず業者さんに預けていたものがこちら。
ヒビだらけなのが分かりますでしょうか(笑)裏の釉薬を取り除く際に、どうしても薬品では溶けないということでブラストを使っていただいたんです。ブラストは、風圧で砂を叩きつけて削ったり、表面を荒らしたりできる機械なのですが、その衝撃に耐えきれずバキバキになってしまったもよう。
何度か焼いてみたのですが、ガラス同士はくっついてもヒビは無くなりませんでした。
想定外の仕上がりですが、なんだか綺麗なのでほっといてます。

そして、業者さんに預けている間にフルスピードで作っていたものがこちら。
これが一番トラブルがなかったです。裏面に薬品の色がついて取れない!というのがどの作品にもあったんですが、醤油の力でだいぶきれいになりました。なぜか醤油が効くんです。

もうひとつのほうは、薬品バケツから出した途端、パキパキパキッと鋭い音をたててヒビだらけになってしまいました。
幸い、大破せずに済んだのですが、この原因はさっぱりわかりません。


成功したものも失敗したものも、全て展示しようと思っております。ヒビ具合が気になりましたら、お気軽にお声をお掛け下さい(笑)

2011年7月23日土曜日

乾漆と卒制


こんばんわ。
台風もやっと去り、明日からは暑さも戻ってくるようですね。大学はあと2日ほどで夏休みに入ります。

先週はちょっと忙しく過ごしていました。夏休みに入ってしまう前にやらなければいけない作業が山積みだったからです。
家では展示に向けての制作をしていますが、大学では卒業制作を進めています。
今日は卒業制作の話をちょっとしたいと思います。


私は乾漆という技法で動物を作っています。
乾漆とは奈良時代からある技法で、有名なのは興福寺の阿修羅像です。
簡単に説明すると、粘土で原型を作り、そこに麻布を着せて漆を塗る、という行為を何度か繰り返し、最後に粘土を抜いて張り子のような状態にします。とても軽くて強固で、状態が良ければ何百年という単位で長持ちします。
昔からある技法ですが、現代では石膏型に置き換えたり、胎を金網などの金属を使用したり、発砲スチロールに直接貼ったりなど多様化しています。最近では彫刻家の間でも流行っているようです。


写真は粘土から石膏型を割り出したところ。ここに地を混ぜた漆を塗り、布を着せ、バラバラのパーツをくっつけて脱乾します。
作業が進み次第また写真を載せたいと思います。
ではまた〜。

2011年7月20日水曜日

鋳型のはなし

韓国から帰ってきました。ただいま!今回韓国旅行レポートにしようと思ったのですが、諸事情により手元に写真がなく・・・いつものように、制作風景をば。
写真は石膏鋳型を作っている写真。

鋳型という、金属を流し込むための型は様々な種類があります。
これまでやっていたのは真土(まね)型といって、土でできています。同じ土を何度も繰り返し使うのでゴミが出ません。材料費もかかりません。しかしとても時間がかかります。

今回は石膏鋳型。名前のまま、石膏で型をとります。石膏だけでは焼成の時や、流し込む金属の温度に耐えられないので耐火材などの混ぜ物をします。型作りにかかる時間は真土型より格段に早いです。

他にも生型といって焼かない型や、惣型(そうがた)といって、直接自らの手で金属が流れる空洞を作るような型もあります。
色々な種類がありますが、流す金属の温度に耐えられる材料で、金属の流れるくぼみがあれば鋳型ができます。
中学の美術の教材で、厚紙で鋳型を作ってピューター(240℃くらいで溶ける金属)を流す、というキットがあります。紙でもできる、と。夏季休業に入ったら家でやってみたいと思います。


石膏鋳型の話に戻ります。できた鋳型は中の蝋を溶かし出し、中の水分をなくすために焼きます。今回は電気炉で45時間焼きます。
電気・・・以前は全く気にせず使っていましたが、今は使えることに感謝しつつ、使う時間を気にしつつ。

2011年7月17日日曜日

七宝 其ノ四

おはようございます。毎日暑くてげんなりしながら、800度の電気炉と格闘してます。
あの炉を開けた瞬間の熱気は凄まじいです、一気に汗が噴き出しますから・・・。


それでは前回の続き↓↓


三番焼きが終わるとこんな感じです。
これ以上色を差しても、研磨の際に取れてしまうので、三番差しまででなんとか理想の色までもっていきます。
ただし私は色見本のつもりで作っているので、これが出来上
がったときに初めて、欲しい色を見つけられるわけです。

果たしてどうなっていることやら。


四番差し。
銀線の上に少しかぶせるように、無色透明の釉薬、白透(シロスケ)を、金属ベラなどで均一にのせていきます。

研磨は銀線がキラリと光って見えるまで削り出すので、ここで白透をのせすぎると、最後に非常に大変な作業をするはめになります(笑)




四番焼きが終わりました!なめらかになりましたね。
ここで完成にしますと「焼き艶仕上げ」となります。
でも、基本的には砥石でせっせと磨いて仕上げます。




このあとの研磨の工程は、うっかり写真を撮り忘れてしまったので、業者さんから帰ってきたらお見せしたいと思います。でもこのあいだお話しした感じだと間に合わな・・・そ・・・


2011年7月14日木曜日

近況やらDMやら。



こんばんわ。また更新遅れてすみません。

最近は卒業制作に追われて日々忙しく過ごしております。
夏休みまであと1週間。4年間なんてほんのあっという間ですね。お、恐ろしや・・;;

ところで展示のDMを直ちに作らねばなりません。8月頭には入稿したいのでまたイラレとフォトショと格闘しなければ・・;;。デザイン練り中です。なにか案が欲しいです、とりあえず出来上がったらアップしますね。

あと、これうるし。

つやっつやでしょう(笑)
空気(酸素)に触れるとだんだん黒くなっていきます。鉄粉を入れてわざと黒くした漆やら何やら漆にも種類は多様にあるのですが、生漆(きうるし)と呼ばれる掻き出したばかりの最初の状態の漆は乳白色をしています。



あと最近ちまちまと作り出した動物。
まだ先は長いです(笑) 
ではまた。


2011年7月10日日曜日

結果

結果。
あ、あれ・・・ぼろぼろになっている・・・!?

↑これが元の形(右)

9つ作った内8つはこんな状態。
原型を作るのに使った蝋か、型の作り方か、型の焼き方か、これが原因、とはっきりはわかりません。今度また少しずつ条件を変えて実験して、原因をはっきりさせたいと思います・・・

これから成田空港へ向かいます。研究旅行で韓国へ行ってまいります!

2011年7月8日金曜日

七宝 其ノ三

今週フルスロットルで作業をしたら、なんとか砥ぎまで終わりまして無事にこいつも業者さんにあずけることが出来ました!

↓ということで、また作業の様子を・・・。



一番焼きが終わったところです。
見事に釉薬がひけて、銀線を立て終わった頃となにも変わらないように見えますね(笑)
釉薬は細かいガラスの粒でできているので、溶けた際に、粒と粒の間の空気が抜けて、その空気の分釉薬の高さが下がってしまうんです。だから銀線の高さに届くまで、何回も施釉するわけです。

そしてこの高さが減るのを利用して、複雑に色を重ねたり、濃くしたり、できるだけ隙間を埋めて穴が開かないよう工夫します。



そして二番差し。
一番差しのベースを元に、最終的な理想の色を目指して、さらに下地のつもりで差していきます。





二番焼き。
銅の赤い色に負けず、青っぽい色が残ってきました。
これも、二番差しをのせた時の半分ほどに減っています。







三番差し。
二番差しにどんな色を重ねてどんな青を出すか、試行錯誤しながらのせていきます。緑や白なども差しましたよ。





だいぶ長くなってしまったのでこのへんで。
次は、三番焼き、四番差しです。

2011年7月7日木曜日

変わり塗り



こんばんわ。
みんなのブログの更新の早さにヒヤヒヤしている加藤です。

近頃は色々ありました。
宮城県の石巻に行ったり、映画を観たり、卒制の粘土原型にトラブルが発生したり、映画観に行ったり、芸術祭の展示ごとでわたわたしたり、映画観に行ったり。

そんなこんなでなかなか製作が進んでいません。ほぼ自業自得です 笑

漆の技法で、変わり塗り、というのがあります。
墨流し、七々子塗り、研ぎ切り蒔絵、八雲塗りなど・・。
文字を並べただけでは分かりませ
んが、本当にたくさんの技法があるのです。
工芸というより絵画的と感じることもしばしばですね。
まだ未完ですが、写真は手板に葉っぱを押し付けたもの。


この技法はわりと気に入っています。

あとおまけ。



一目惚れして買っちゃったかえるのぬいぐるみ 笑

ではまた。

2011年7月3日日曜日

吹き

前回に引き続き・・・
出来た型に金属を流し込んでいるところ(写真は撮り損ねたので今回のではないのですが)。


この作業を「吹き」や「鋳込み」と呼びます。今回溶かした金属はブロンズです。ブロンズが溶けているときの温度は1000℃を超えます。制作工程の中で最も危険で緊張する場面。
本来は吹きの後は「後吹き」という、安全に吹き終えたことを鞴(※)の神様に感謝するお祝いをします。今回は小さかったことと少人数だったので省略してしまいましたが…

冷めたら型を割って金属を取り出します。

・・・。
・・・・・・。
必ずしも作った形そのままで出てくるわけではありません。私は作った形そのまま出てきたことがありません…きれいにいったと思っても思わぬ穴が空いていたり。今回の結果は次回お伝えします…

※鞴(ふいご)…空気を送り出す器具。金属を溶かすほど火の温度を上げるためには、大量の空気が必要です。今は電動で風を送り込めますが、昔はこの鞴がないと仕事になりませんでした。11月8日は鞴祭りといって、安全を祈願する行事があります。

2011年7月2日土曜日

七宝 其ノ二

昨日一回目の焼成が終わりましたが、画像は一番差しの様子です。

ガラスの塊を小さい粒に粉砕したものが、「釉薬」(ゆうやく)といって、絵画の絵の具のように作品に色をつける材料となるのですが、この釉薬をのせていく作業を「差す」(さす)、または施釉(せゆう)と言います。一番差しは、一回目の釉薬をのせる作業ですね。
この作品は、銀線の高さが通常の平面作品よりかなり高いので、釉薬を差す回数も必然的に多くなります。平面では三番差しまで行うことが多いのですが、私の場合は四番か五番まで差す予定です。何度も施釉を重ねるのは、一度にたくさん釉薬を盛ると、気泡が入って表面にぷつぷつと穴が開いてしまうからなんです。
どうしても避けられない現象ですが、できるだけ気泡は少なく仕上げたいです。見え方が大分変わりますからね・・・。

赤っぽくみえる部分は、まだ釉薬がのっていない為銅板の色が見えています。
こちらは全体的に青っぽく仕上げようと思っているので、一番最初の下地として、薄い青や緑の釉薬を差しました。
釉薬は、竹を割いて削り出す、「ホセ」という道具を使って施釉しているのですが、こいつで細かい模様を差そうと思うとなかなかうまく入らず、竹串や爪楊枝などあらゆる細いものを使って隙間を埋めています。


次は、一番焼きが上がった様子と、二番差し・三番差しをお見せできるといいなーと思っております。頑張ります。

漆ちょっと知識と展示。

漆についてちょっとだけ説明でもしましょうか。
漆って聞いたら何を想像しますか?
やっぱりうつわや箸といったところでしょうか。

漆はウルシノキから採取した天然の樹液です。
育成後10年経った一本の木から、たったの200gしか採取出来ません。
漆は熱、酸、アルカリ、湿気に強く、また防虫、防腐防止の効果があります。美しい艶のある塗料であり、地上最強の接着剤ともいわれています。
そして歴史はとっても古く、縄文時代から使用されています。
漆は紫外線には弱いのですが、紫外線が当たらず、湿気のある例えば土の中なら9000年もその姿を残すことができるんです。これはすごいですね〜笑

ところで今日は銀座に展示を見に行きました。
2丁目のMEGUMI OGITA GALLERYで、乾漆で人物をメインに作ってらっしゃる保井智貴さんの展示です。
保井さんは彫刻家の出身ですが、乾漆という奈良時代からある漆の技法を使ってらっしゃいます。乾漆についてはまた後日に説明しようかな・・。
口で語るよりは見てもらった方が良い!
ところがこの展示、7月2日までなんです・・;;言うのめっちゃ遅かったね;;

漆ってなんでもあり!

これが今日一番言いたかったことでした〜